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親の家を建て替え、家業の事務所を併設した二世帯住宅にしました。
1階に事務所と和室、駐車場を並べ、2階に親世帯の生活スペースと水回り、3階に子世帯の生活スペースをそれぞれ積み重ねています。建物の中央部に配した階段と外部に設けた鉄骨階段によって、これらの階を内外で結び付けました。
2階の親世帯のリビングは、もともと植えてあったアンズの木がよく見える南側に配置しました。一方、3階の子世帯のリビングはあえて北側に置き、南側に3つの個室を並べています。斜線制限により北側の方が天井高を高くできる点を活用した間取りです。
個室との天井高の差を生かし、リビングには高窓を設けて採光を確保しました。東面に設けたテラスに面して天井いっぱいの窓を設けた設計ともあいまって、北側の部屋とは思えない明るく気持ちよい空間に仕上がっています。
南側に並べた3つの個室は引き戸で仕切り、フレキシブルな使い方に対応できるようにしました。子供が小学校と幼稚園に通う現在は、開け放して広い1室に。子供たちが成長したら引き戸を閉めて使い、さらに成長したら、間仕切り壁を設けられるよう想定しています。
実は当初、この土地に事務所と二世帯住宅の入る家を建てたいという話を伺った時は、「それだけの機能が入るだろうか」と思いました。都市周辺にありがちな、厳しい条件の敷地だったのです。
やや密集した住宅地に位置し、前面道路は3.7メートル幅しかありません。敷地条件から、容積率は160パーセントしか使えないという状況でした。
建て主側からは2台分の駐車場や、それぞれの世帯に水回りが欲しいといった要望が出ていました。でも、すべての要望は盛り込めません。家族と話し合った結果、駐車場は1台分に減らし、浴室は両世帯が共用することで落ち着きました。
一方で、3階と屋上にはテラスを設けました。外とのつながりを与え、限られた空間の中で広がりを感じさせる場を提供したかったからです。実際、天気の良い日には屋上テラスから富士山を見晴らすことができ、とても気持ちいいんですよ。
この家の特徴の一つは、「SE構法」という木構造を採用していることです。集成材を用いて特殊な金属継ぎ手で接合したSE構法は強度が高く、約2間(3.6メートル)の長さの梁を使うことができます。一般の木造に比べて耐力壁が少なくて済み、室内に広い空間を確保できるのがメリットです。
また準耐火構造として認められているため、柱や梁といった木部をそのまま見せる仕上げを採用できます。一般の木造では軒高を9メートル以内に抑える必要がありますが、それも、この構法の場合、12メートルまで許されます。木造だけれども、鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りに近い、広がりのある空間構成が可能になるのです。
今回は敷地にかかる建築規制との関係から、建物の高さは10メートル未満に抑えていますが、それでも一般の木造より1メートルほど高くできました。その分、3階リビングの天井高をゆったり取れましたし、キッチンの上には小屋裏収納を設けられました。
それでいて、木造で建物が軽いため、鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りで用いる杭基礎は必要ありません。十分な強度を確保しながら、価格は鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りに比べて安いというメリットもありました。こうした構造の話は一見地味ですが、気持ちよく、そして性能の高い生活空間を構築するためには欠かせない要素です。
デザインは見栄えの良さだけを追い求めるものではありません。しっかりとした骨格を用意したうえで、いかに質の高い空間に仕上げていくか。私は、そんなバランスのとれた設計を目指しています。 (田中友章/フォルムス)
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